雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「オレは一向にかまわない。甘いものは街で買ってくればいいわけだし。おまえの方が文字の勉強だけしている事に耐えられるならな」
ユイは息を飲んで絶句した。
どういうわけか、ユイは文字を覚える事を嫌がっている。
勉強する事が嫌いなのかもしれない。
それとも、さっさとニッポンに帰りたいと思っているのだろうか。
そうだとしたら、少し複雑な気分だ。
ユイが悔しそうにわめいた。
「もう! くやしーっ! こんな事なら、ヤキモチだって言っとけばよかった」
冗談じゃない! ロイドはすかさず額を叩いた。
「ふざけるな。それじゃ、まるでオレが……」
再び余計な事を口走りそうになり、ロイドは慌てて口をつぐむ。
(まるでオレが、おまえに惚れてるみたいじゃないか。そんな事ジレット様に言われてたまるか)
実際にそうでも、ユイ本人は気付いてないのに、他の人間が知っているのはおもしろくない。
不思議そうに見つめるユイから顔を背け、ロイドはそのまま研究室に入って行った。