雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「わかりました」
ローザンが電話に歩み寄るのを横目に見て、ロイドは研究室から駆け出した。
貴賓室へ続く廊下の途中から、狭い通路に入り、馬車置き場へ向かう。
出口が見えると、ロイドは足音を立てないように、静かに歩を進めた。
背後で大勢の足音が聞こえ、すぐに静まった。警備隊が到着したようだ。
出口の壁際に寄って、そっと外を窺うと、見知らぬ男がこちらに背を向け、馬車の入口に立っていた。
その向こうにユイの姿が見える。
ユイを無理矢理、馬車に乗せようとしているようだ。
セギュール侯爵の姿は見えない。
男がこちらに気付いていないのは好都合だ。
ロイドはポケットのピルケースから、拡声器のマイクロマシンをつまんで口に放り込む。
耳栓をして出口に立つと、ユイが気付いた。