雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

 それを使い切っても殿下が見つからなかった場合、ロイドは苦渋の決断を迫られる事になる。

 最後の十秒で、ユイをニッポンに帰すか、殿下の捜索を続行するか。

 優先するべきは、殿下の捜索だと分かっている。

 だが今回の活動期が終われば、次の活動期まで三十年間、遺跡の装置を利用してユイを帰す事は出来なくなる。

 ロイドの考えている時空移動装置が完成すれば、三十年も待たなくていいかもしれない。
 けれど、それも遺跡の装置の仕組みが分からない限り、あまり当てにはならない。

 最後の十秒で殿下が見つかればまだいい。
 ユイは殿下の身代わりを解任されるからだ。

 しかし殿下が見つからなかった場合、この先三十年身代わりを続けさせる事になるだろう。

 今のような付け焼き刃の身代わりでは済まない。

 三十年のうちには、ジレット嬢との結婚や、国王への即位がある。
 そしてあの、ひとくせもふたくせもある貴族たちと渡り合い、殿下の立場を守り抜かなければならない。

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