雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「オレなんか、好きになるな」 (2)

 胸中を見透かされているようで、心が折れそうになり、ロイドはユイにしがみついた。


「何?」


 驚いたように尋ねるユイを、ロイドは更にきつく抱きしめ、絞り出すように言う。


「少し、黙ってろ」


 ユイは言われるままに、黙って身体の力を抜いた。

 貴重な十秒を無駄にした。
 残りは後、百四十秒しかない。
 たったそれだけの時間で、本当に殿下を見つける事が出来るのだろうか。
 そう思うと、不安や焦りが胸の中で渦巻く。

 腕の中にあるユイの温もりが、そんな荒れた心を次第に静めていった。


「おまえを抱いていると、気持ちが落ち着く」

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