雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「ロイド!」


 振り向いた途端、必死な表情でユイが胸に飛び込んできた。


「一緒に連れて逃げて。王子様が見つからなかったら。私、あなたについて行く」


 また余計な事を言って、ユイを悩ませてしまったらしい。

 一緒に逃げても、幸せになどなれない事くらい、ユイも分かっているはずだ。

 それでも、共に破滅の道を歩む事を選ぶと言うのか。
 嬉しいはずの言葉が、胸に痛い。

 しがみつくユイをそっと抱きしめ、ロイドは静かに答えた。


「あぁ。だがそれは最後の手段だ。最後まで最善を尽くそう」
「うん」


 ユイは安心したように、笑って頷いた。
< 215 / 374 >

この作品をシェア

pagetop