雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 局長としてのロイドの仕事は、大半が事務処理だ。
 局員の研究開発の計画書や報告書に目を通して、承認の可否を行う。

 書類に目を通すだけなら、王宮の研究室からでも行える。
 科学技術局のホストコンピュータにある電子データを参照する事も出来るからだ。

 しかし承認には直筆の署名が必要なので、科学技術局まで行かなければならない。

 局内では毎日次々に研究開発が行われているので、ちょっと油断するとすぐに書類は山のようにたまる。

 ユイがいた一ヶ月の間にたまった書類は、膨大な量になった。
 途中に一度逆転送のテストで行った時、急ぎのものだけ片付けたが、ユイが帰った後、全部片付けるのに一週間はかかった。

 ロイドはフェティを見据えて、言われる前に牽制する。


「たまってる仕事なら、昨日片付けただろう。今日は雨だから行かないぞ」


 フェティは形のいい眉をつり上げて、ロイドを睨み返した。


「毎日片付けるのが筋だと思いますが、今日の用事は違います。子供のような駄々を捏ねないで下さい」

< 226 / 374 >

この作品をシェア

pagetop