雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

 互いに一言も口をきかないまま殿下の部屋にたどり着き、ユイが扉に手をかけるのを見届けて、ロイドは立ち去ろうとした。
 ユイは慌てて、それを引き止める。


「待って。一緒に来て」


 ロイドは怪訝に思いながらも、ユイの後について部屋に入った。

 部屋の中では使用人たちが掃除の真っ最中で、ラクロット氏がそれを監督していた。

 日中は部屋に戻ってくる事のないユイを、驚いて見つめるラクロット氏に、ユイは殿下になって人払いを命じた。

 ラクロット氏が使用人たちを連れて部屋を出て行くと、ユイは真っ直ぐリビングに向かう。

 ユイが二人きりで、何を話そうとしているのか想像はつく。
 ずっとごまかし続ける事が、出来るわけもない。

 ロイドはリビングの入り口で立ち止まると、無表情のまま芝居がかった調子で問いかけた。

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