雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

 女は不安そうな顔でロイドを見つめる。
 ロイドは少し意地悪く笑う。


「両手がふさがってるからな。口移しだ」


 舌先に乗せたマイクロマシンを見せつけると、女が必死でもがき始めた。

 逃がすわけにはいかないし、さっさと女の口に移してしまわなければマズイ。

 マイクロマシンは体温と湿度を感知して、数秒後に作動する。
 自分の口の中で作動させるわけには、いかないのだ。

 ロイドが顔を近づけると、女が目を閉じ、大きく口を開いて叫んだ。


「イヤ————ッ!」


 ちょうどいい!
 咄嗟にロイドは、開いた女の口目がけて、マイクロマシンを吐き出した。

 女の目が驚愕に見開かれた。
 頭を持ち上げようとしたので、手で口を塞いで床に押しつける。
 苦労して飲ませたものを、吐き出されては困る。

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