雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「覚悟ができたのか? こんな時間にオレの部屋に来るとは」(1)

 いつものように真夜中過ぎに自室に戻り、風呂に入ったら一杯引っかけて寝ようと考えていると、テラスに面したリビングのガラス戸を叩く音がした。

 テラスからやって来るのはユイに違いないが、時間はすでに深夜一時を回っている。

 不審に思いながらもカーテンを開くと、そこには、はたしてユイが立っていた。

 見当はついていたものの、まさかと思ったので、ロイドは驚いてガラス戸を開けた。


「まだ起きていたのか」


 ユイは思い詰めたような表情でロイドを見つめる。

 そんなわけはないと否定しながらも、ちょっとだけ期待しつつ、ロイドはガラス戸に縋って、少し笑みを浮かべ問いかけた。


「覚悟ができたのか? こんな時間にオレの部屋に来るとは」


 ユイは即座に否定した。

< 253 / 374 >

この作品をシェア

pagetop