雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「そのかわり、毎日思う存分キスしてやるからな」
「思う存分って、どのくらい?」
「オレの気が済むまでだ」
「……え……」


 ユイは困惑した表情で絶句した。

 ロイドはユイから手を離すと、背中を軽く叩いた。


「目が覚めたなら、さっさと部屋に戻って寝ろ。でなきゃ、約束無視して真剣に襲うぞ」
「うん。帰る」


 ユイは立ち上がり、明日の遺跡探検の時間を聞いて、部屋を出て行った。

 テーブルの上にユイが残したグラスを手に取り、中身を一気に飲み干す。

 果実酒の甘さが、ユイの唇を思い出させ、ロイドはクスリと笑った。

 殿下が見つかるまでユイに手を出さないという歯止めは、ユイとの約束で以前よりも強固なものになってしまった。

 けれどあの甘い唇を、毎日思う存分味わう事が交換条件なら悪くはない。

 残り十五日間、ユイと共に過ごす時が、より一層幸せなものに感じられた。

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