雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
飛んできた昆虫型ロボットは、以前ロイドか殿下に差し上げたものだ。
それがこの遺跡の中にいたという事は、殿下がここにおいでになったという事だ。
ユイの仮説はほぼ立証された事になる。
突然ユイが思い出したように、こちらを向いた。
「ねぇ。もしかして、王子様がジレットに教えるって言った秘密って、この遺跡の事じゃないの?」
目に見えるもので、見たら驚くものだとユイは言っていた。
確かにこの遺跡はその通りだが、東屋の穴はジレット嬢を案内するには無理がある。
第一ユイが踏み抜くまで塞がれていた。
他にも不審な点はある。
昆虫型ロボットは小鳥ロボットと同じように、熱エネルギーで動いている。遺跡内に熱源はない。
殿下が持ち込んだとしても、その後十六日間、どこからエネルギーを得ていたのだろう。
人工知能は搭載しているが、小鳥ほどの知能はない。
奥にあるかもしれない出入口から、外と行き来していたのかもしれないが、奥に誰か、殿下の——ユイの身を脅かす者が潜んでいる可能性もなくはない。
ブラーヌの足止めも必要なので、奥の探索は後回しにして、ロイドはユイと共に、元来た通路を地上に向かって引き返した。