雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「その声で女言葉はよせ。殿下がご乱心あそばされたかと思われるだろう」
「この薬、効果はどのくらい続くの? 毎日飲んでたら効かなくなるんじゃない?」

「それは薬じゃない。人の話は真剣に聞け。薬が都合よく移動したりするわけないだろう。声帯に取り付いて声帯の振動を制御するマイクロマシンだ」


 丁寧に説明したにも拘わらず、女は無言のまま不愉快そうにロイドを睨む。
 どうやら言った事が分かっていないようだ。


「声帯に取り付ける、ものすごく小さい変声機だ。作動時間は約十五時間」


 子供にも分かるように言い換えると、女はようやく納得し、問いかけてきた。


「どうして、こんなもの作ったの?」
「男が女の声になったらおもしろいと思わないか?」


 女は絶句し、白い目でロイドを見つめる。
 自分の作ったマシンに対して、こういう反応が返ってくる事はよくあるので、ロイドはいちいち気にしていない。

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