雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 ロイドの言葉に、ユイは不服そうに口をとがらせた。


「それって褒めてるの? けなしてるの?」


 ロイドはクスクス笑いながら、カップを持って立ち上がる。


「もちろん、褒めてる」


 そして流しへ向かう途中、ユイの横で立ち止った。

 王宮内の捜索が先延ばしになった時、思い切りガッカリしていたが、ユイは覚えているのだろうか。

 殿下が見つかったら——という約束を。

 それを確かめたくて、ロイドは聞こえるようにつぶやいた。


「明日の朝、殿下が見つかったら、夜が楽しみだな」
「……え……」


 横目で様子を窺うと、ユイは戸惑いがちに見上げていた。
 どうやら忘れてはいないようだ。

 照れ屋のユイをちょっとからかってみたくて、もう一言付け加えた。


「あぁ、今夜見つかるかもしれないな。どっちにしろ楽しみだ」


 ユイは困惑した表情で、引きつり笑いを浮かべた。
 予想通りのユイの反応がおかしくて、ロイドは笑いながらその場を後にした。

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