雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「こんな予想外はいらない」(1)
廊下をせわしげに近付く音が聞こえ、殿下の部屋の扉がノックされた。
ユイが応対に出ると、ラクロット氏が心配そうな表情で顔を覗かせた。
騒ぎを聞きつけてやって来たのだろう。
ラクロット氏の声を聞いて、浴室から殿下が顔を出した。
「あ、ラクロット。ちょうどよかった。髪を乾かすのを手伝ってよ」
「え……殿下……」
ラクロット氏は目を丸くして、殿下とユイを交互に見つめる。
ロイドはラクロット氏に殿下の身支度を頼んで、ユイと共にリビングに向かった。
二人で並んでソファに座ると、ユイが眉間にしわを寄せ、苛々しながら問いかけた。
「いったい、どういう事?」
「おまえの読みが当たってたって事だろう。詳しい事は、これから伺うとしよう」
ユイはむくれた表情で押し黙った。