雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
ロイド自身も、なんとなく胸がモヤモヤしていた。
殿下が無事に見つかった事は喜ばしいが、あの様子では誰かに拘束されていたというわけではなさそうだ。
何か、身を隠さなければならないような事情でもあったのだろうか。
それなら、もっと早く陛下から何かしらの説明があってもいいはずだ。
もちろん、ロイドにそれを知らせなければならない義理は、王室にはないのだが……。
少しして身なりを整えた殿下が、ラクロット氏を従えてリビングに入ってきた。
ロイドが席を立つと、ユイも続いて席を立つ。
殿下は立ち止まり、ロイドに向かって笑顔を見せた。
「待たせたね。何から話そうか」
すると突然、ユイがつかつかと殿下に歩み寄り、その頬を思い切り叩いた。
「なに笑ってんのよ!」
「ユイ!」
ロイドは慌てて、後ろからユイを抱きかかえ、後退させた。