雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
その日ロイドは、副局長にやかましくせっつかれ、ようやく重い腰を上げて科学技術局に戻ろうとしていた。
メインコンピュータの電源を落とし、窓の戸締まりを確認して、王宮内の研究室を出ようとした矢先、レフォール殿下の世話係ラクロット氏が、血相を変えて飛び込んできた。
「ヒューパック様、殿下は……!」
「殿下は朝おいでになりましたが、今こちらにはいらっしゃいません」
「それでは、やはり……」
ラクロット氏は途方に暮れたように頭を抱えた。
その様子にただならぬものを感じて、ロイドは問いかけた。
「殿下の身に何か?」
「王宮内のどこにも、お姿が見えないのです!」
ラクロット氏によれば、殿下は午後から、国王陛下との会談の予定があったという。
時間が来たので、ラクロット氏が部屋へ知らせに行ったところ、部屋の中に殿下の姿はなかった。