雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「こんな予想外はいらない」(3)
確かに陛下には最初から、自分がユイに興味を持っている事を見抜かれていた。
図らずも陛下の思うつぼにはまったという事か。
殿下はずっと遺跡に隠れていたわけではなく、ラクロット氏からロイドとユイの動きを聞き、陛下の部屋に寝泊まりして、陛下の食事を分けてもらいながら、普通に生活していたらしい。
幽霊騒ぎも厨房の料理消失も、殿下の仕業だったという。
殿下はロイドを見つめて、クスクス笑い始めた。
「僕ね、何度も見つかったって思ったんだけど、ロイドったら、いつもは冷静で頭が切れるのに、ユイが絡むと、おもしろいほど判断力が鈍るんだよ。
ユイが東屋の石段を壊したとき、後でロイドが調べに来たって言うから、てっきり遺跡が見つかって、僕が隠れていた事がばれるだろうと思ったのに、なんだか陰謀説になっちゃったし。
ユイが攫われそうになった後は、僕が異世界に飛ばされた事になって、びっくりしちゃった」
言われてみれば、どれも全くの見当違いで間抜けだ。
ロイドはきまりが悪くなり、黙って目を伏せた。