雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 赤い筋は先ほど飲ませた果実酒が、口からこぼれた跡だとわかった。

 そして、うっかり間近で、酔ったユイの卑怯な顔を見てしまった。

 ちょっとだけ、味見をしてみたくなる。


「なんだ、こぼしたのか。しょうがないな」


 そう言ってロイドは、ソファの背もたれに両手をついて、その間にユイを閉じ込めた。

 焦点の合わないうつろな目でユイが見上げる。

 ロイドは顔を近付け、唇と舌先でユイの首筋に残る、赤い跡を辿った。

 突然ユイが飛び上がって、声を上げた。


「ひゃあぅ!」


 あまりにも素っ頓狂な声に、一気に気が削がれ、ロイドは顔を上げてユイを睨んだ。

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