雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「甘そうだな」(1)
ユイと共に陛下との謁見を済ませると、ロイドはひとり研究室に戻った。
ユイはこれから殿下になるために、殿下の部屋でラクロット氏にみっちり教育を受ける。
言葉遣いが何とかなれば、正体がばれる事はまずない。
殿下は普段、無邪気で奔放な少年を装っておいでだ。
ユイが多少突飛な行動を取っても、怪しまれる事はないだろう。
問題なのは、ロイドに対する反抗的な態度だ。
王宮内では自由にしていいとは言ったが、あまり自由にされ過ぎても困る。
ロイドの言う事に逆らい勝手な事をして、仕事を増やされては、殿下の捜索に支障を来しかねない。
女の機嫌取りなど本意ではないが、多少は機嫌を取って手なずけておこうとロイドは思った。
ふと机の上に置かれた、黄色い小鳥に目が止まった。
殿下に差し上げるつもりで、数日前に完成し動作テストも完了している、人工知能搭載のロボットだ。
以前差し上げた昆虫型ロボットより、格段に頭がいい。
小鳥なら女でも嫌がらないだろう。