雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 やはり、そう来たか。
 これまでも報告に来る度に言われてきた。

 ロイドは軽く息をついて目を伏せた。
 陛下は不思議そうに尋ねる。


「どうした? おまえにとっては嬉しい罰だろう?」

「……ユイは異世界の人間です。ユイは自分の世界に、家族や友人や仕事を持っています。知らせるヒマもなくクランベールにやって来たユイが、私と結婚してここにとどまれば、失踪した事になってしまいます。ユイの両親に、二十七年間心配し続けている私の両親と同じ思いをして欲しくありません。私は考えてもみなかった事ですが、陛下ならお分かりでしょう。ユイに言われました。親とはそういうものなんでしょう? 私はどこから来たのかも分かりませんが、ユイは分かっています。ニッポンに帰って、両親に無事である事を知らせて欲しいんです」


 ロイドがそう言うと、陛下は尚も食い下がった。


「それは分かっている。ユイを帰さないというわけじゃない。おまえの事だ。全く方法がないわけじゃないんだろう? 以前話してくれた事があるじゃないか」

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