雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「この先もずっと、一生覚えておこう」(4)

 刻一刻と終わりの時が近付くにつれ、胸のざわめきが増してくる。
 このままユイと朝まで一緒にいて、平静を保てる自信がない。

 ロイドは夕食と風呂を終えた後、酒ビンとグラスを持ってリビングに向かった。
 ソファに座りユイに宣言する。


「今夜は飲むぞ。慰労会だ」
「え? 何の?」
「おまえが見事に殿下の代役を務めきった事のだ」


 ユイは一瞬、不思議そうに目をしばたたいた後、笑ってグラスを取った。


「うん。ありがとう」
「お疲れ」


 グラスの縁を合わせて乾杯すると、ユイは舐めるようにして、ほんの少し酒を飲んだ。
 甘い酒ではないので、一気に飲んだりしないようだ。
 今夜酔っぱらって、さっさと眠り込まれては切ない。

 けれどロイド自身は、酔ってしまいたかった。
 胸のざわめきを紛らわせたくて。
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