雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 酔えない焦りと共に、胸のざわめきが押さえきれないほど膨れあがってきた。

 酒ビンを傾けて、空になっている事に気付いた。

 ロイドはタバコをもみ消し「もう一本持ってくる」と言い、席を立つ。

 リビングの出口に向かっていると、ユイが後ろから声をかけた。


「あんまり飲み過ぎない方がいいんじゃない?」


 ロイドはピタリと歩を止めた。
 ユイの優しいいたわりの言葉に、胸のざわめきがピークに達する。

 これ以上、心の平静を保てそうにない。

 ロイドが立ち尽くしていると、ユイが心配そうに歩み寄って来た。


「やっぱり酔ってたのね。大丈夫? 気持ち悪いの?」


 とうとう押さえ込んでいた心のタガか外れ、ロイドは俯いたままポツリとつぶやいた。


「酔ってない。素面(しらふ)でなんかいられるか。なのにちっとも酔えない」

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