雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「魔性の唇だものね。言わなくても分かったけど、どうして今まで言わなかったの?」

「おまえを悩ませたくなかった。だが、結婚しようと言っても揺るがなかったし、おまえの決意が固い事は分かった」

「だって、せっかくあなたが私のためにマシンを改造してくれたし、帰った方がいい事も分かってるもの」

「そうか」


 真っ先にユイを帰すための改造なんかするんじゃなかったと、少し後悔する。
 ロイドは更にきつくユイを抱きしめた。


「オレがもっと出来の悪い科学者ならよかったんだ。おまえをニッポンに帰す方法も、マシンの改造方法も分からなければ、おまえを帰さずに済んだのに」


 ユイはなだめるように、ロイドの背中をポンポン叩く。


「弱気なあなたなんて、らしくないわ」
「今だけだ。明日には忘れろ」

< 352 / 374 >

この作品をシェア

pagetop