雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 ランシュ=バージュは十八年前に生まれた、非合法の体細胞クローンだ。

 当時の未完成なクローン技術のせいで、彼の身体は十代半ばから老化を始めている。

 ランシュ自身もその宿命は承知していて、ロイドの助手を務める傍ら、精力的に自分の研究開発に取り組んでいた。
 まるで人生を凝縮して、生き急ぐかのように。

 そしてランシュが最後に行った開発が元で、彼は科学技術局の局員を免職された。

 ロイドの制止を振り切り強行しようとした開発は、法に抵触するものだったのだ。
 それが副局長の目に留まり、ロイドは局長として、やむなくランシュを免職にするしかなかった。

 ランシュは皮肉な笑みを浮かべて、投げやりに言う。


「オレに二度と悪事が働けない事を確かめに来たんですか?」

「見舞いに来ただけだ」

「見舞ってもらったって、もう長くはない事くらい自分で分かってます。最近は起き上がるのさえ億劫なんだ。だから監視だって、そこのカメラしかないでしょう?」

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