雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 ランシュは細い腕を持ち上げて、天井の隅を指差した。ロイドはそれにチラリと目をやり、すぐにランシュに視線を戻す。

 科学技術局のトップシークレットであるランシュには、子供の頃から常に監視がついている。

 局全体の決定事項は、局長とはいえ、ロイド一人に覆す権限はない。

 突然ランシュは、ロイドのジャケットの裾を掴んで睨みつけた。


「あなたを恨むよ。オレの命が長くない事を知ってるくせに、どうして邪魔したんですか?」

「法に背く事を局長のオレが許すわけにはいかない」

「あなただって、同じ事を考えたはずだ!」


 叫ぶランシュを見つめて、ロイドは小さく頷く。


「否定はしない。おまえも考えるだけで終わらせていれば、オレは邪魔しなかった」

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