雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「甘そうだな」(4)

 ロイドが後ろから両肩を掴み耳元で囁くと、ユイの身体がピクリと跳ねた。
 そして小刻みに震え始める。
 それを必死で堪えようとしているようだ。

 どうやら初めてのキスだというのは、ウソではないらしい。

 ロイドは肩から手を離し、頭をひと撫でして、ユイから離れた。


「悪かったな」


 ロイドは手すりにもたれて、空を見上げる。


「これでも責任は感じているんだ。うちの子が迷惑をかけて」


 ユイに視線を戻すと、こちらを向いて手すりにしがみついていた。
 その表情からは感情が読み取れない。
 ぼんやり見つめるユイに宣言する。


「今はまだ見当も付かないが、必ずおまえをニッポンに帰してやるからな。オレのプライドにかけて」

< 48 / 374 >

この作品をシェア

pagetop