雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 子供には見えないし、下ネタにも動じないユイが、まさかキスを知らないとは思わなかった。

 怯えるほど衝撃を受けたとすると、手なずけるどころか、よけいに反抗心を煽ってしまったのではないだろうか。

 ユイに拒絶されてしまった事に、ロイド自身も少なからず衝撃を受けている事が、自分でも不思議だった。

 あの反抗的な態度や、すぐに手が出るところを見ると、元々好かれてはいないはずだ。
 それが決定的になっただけで、どうしてこれほど落胆するのだろう。

 考えても分からない事は、考えない方がいい。

 ロイドはおもむろに立ち上がると、部屋の隅に置かれた机の引き出しからタバコを取り出した。
 口にくわえて火を付け、テラスに出る。

 殿下の部屋に目を向けると、灯りが消えていた。
 ユイはもう寝たようだ。
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