雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
ロイドは部屋に入り、真っ直ぐ寝室に向かった。
寝室の扉も少し開いていた。
扉をノックして声をかけたが、相変わらず反応がない。
いい加減苛ついてきて、ロイドはポケットからピルケースを取り出した。
中から変声機の姉妹品、拡声器のマイクロマシンを指先でつまむ。
口に入れようとして、ふと部屋の中に視線を移した。
床の上に靴を履いたユイの足が見えた。
不審に思い、マイクロマシンをしまうと、取っ手を少し引いて中を覗く。
床の上にへたり込んで、ベッドに縋ったまま、ぐったりとしているユイの姿がそこにあった。
「ユイ! どうした?」
ロイドは早足でユイに歩み寄った。
ベッドに片手を付いて顔を覗き込み、目が点になった。
どう見ても、ただ眠っているようにしか見えない。
額に手を当ててみたが、熱はないようだ。