雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「……もしかして、惚れたのか?」(2)

 安心してホッと息をついた時、ユイの目の縁に涙の跡を見つけた。


(泣きながら、眠ってしまったのか……)


 自分のキスにそれほどショックを受けたのかと思うと、ロイド自身も胸が痛んだ。

 気が強く、陛下の前でも物怖じしない奴なので、すっかり気配りを忘れていた。

 勝手の分からない異世界に、たった一人でいきなり放り込まれて、心細かっただろう。
 その不安な気持ちは、ロイドも知っている。

 二十七年前、薄暗い遺跡の中にたった一人で佇んで、酷く心細かった。

 当時の記憶はほとんどないが、その時の不安な気持ちと、差し出されたブラーヌの手が光のように感じられた事だけ、鮮明に覚えている。

 あの時のロイドのように小さな子供ではないが、ユイも心細い事に変わりはないだろう。

 自分のマシンの誤動作に巻き込まれたからには、ユイを無事に元いた世界に帰す義務がロイドにはある。
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