雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 ユイのたくましさに感心しながら、ロイドは軽く手を挙げて、殿下の部屋を後にした。

 自室に向かいながら、なんだか胸の中がモヤモヤして、ロイドは眉を寄せた。

 ユイの言動に一喜一憂している自分に気付き、苛ついた。

 ユイを手なずけようと思ったのは、今後の作業に支障を来しては困るからだ。

 それは成功したとは言えないが、ユイは殿下の身代わりを務める事を決意したらしい。

 それだけで八割方、問題はないはずだ。

 なのに自分自身が嫌われたままな事に落胆している。

 ロイドは自室の前で立ち止まった。
 ガラス戸に映った自分の姿を見つめて問いかける。


「……もしかして、惚れたのか?」


 口に出した途端、鼓動が跳ねた。

 先ほど向けられたユイの笑顔と、なまめかしい唇、その感触が一瞬にして脳裏に浮かぶ。

 もう一度、あの笑顔を見てみたい。
 そしてもう一度、ユイを抱きしめてキスしたい。

 好奇心とは違う欲求が、ロイドの胸中を満たした。

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