雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
だが、ユイの入退室の度に、セキュリティ装置を停止させるのも面倒だ。
それにユイは、レフォール殿下だ。許可しないわけにはいかない。
本来なら本人の承諾を得た上で、生体情報を提供してもらうのが筋だが、ユイはとにかくロイドのいう事を聞かない。
マイクロマシンの時みたいに、無駄に労力と時間を使いたくないので、コッソリ拝借する事にした。
茶でも飲ませて唾液から採取しようと思ったが、幸いにも髪を触った時、抜け毛が指に絡まったので、それを利用する。
ロイドはユイの髪の毛を、分析装置にセットした。
抽出された生体情報を、そのまま認証装置に登録する。
これでユイが研究室に出入りしても、アラームは鳴らない。
最優先の作業を終えて時計を見ると、研究室にやって来て一時間近く経っていた。
殿下の部屋を出てからだと、もっと経っている。
いくら三十分遅れで朝食を摂っても、さすがにもう済んでいるはずだ。
早速反抗されたかと思うと、少し苛ついた。
ロイドは電話の前に座り、殿下の部屋の発信ボタンを押した。
少ししてユイが応答した。