雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 二つのカップを持って側に行くと、ユイが気付いてこちらを向いた。
 ロイドは砂糖なしの茶を、ユイに差し出す。
 ユイは手の平の小鳥を肩に移し、両手でカップを受け取った。


「ありがとう。もう、すんだの?」
「いや、キリが悪くなるから休憩。もうすぐ昼だしな。探検はすんだのか?」
「うん、だいたい。午後は外に出てみるつもり」
「そうか」


 熱い茶を一口飲んで、ユイは使用人から聞いたという客室の幽霊の話をした。

 その類の話はこれまでにも何度か聞いた。
 どれも真相はわからないまま、噂話の域を出ていない。

 相槌だけ打って聞いていると、ユイが尋ねた。


「幽霊っていると思う?」
「だから、それについては議論しない事にしている」


 ロイドは幽霊を見た事がない。
 だが、見たと言っている者を、否定するつもりもない。
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