雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「そんなにイヤなのか」(1)
午後からもロイドは研究室で、ひたすらデータの解析に忙殺されていた。
そろそろ日も傾きかけようというのに、ちっとも進んだような気がしない。
本体の調査を先にするべきだったかと、少し後悔した。
途中、データ保存用のメモリカードを自室に取りに行った時、通信機でユイに呼ばれた。
突然レフォール殿下の婚約者、ジレット嬢がお見えになっていた。
なんでも、殿下に秘密を教えてもらう約束だったらしい。
その秘密を知らないかとユイに尋ねられたが、初耳だ。
もしかしたら、それが殿下の失踪と関わりがあるのではないか、とユイは言う。
可能性としては捨てきれないので、ユイに探りを入れるように頼んだ。
少しくらいは何かしら聞き出してくれればいいが、あまり期待はできないだろう。
何しろユイは、ロイドのいう事を聞かない。
データの解析が一区切り付いて、ロイドは茶でも飲もうと、給湯コーナーへ向かった。
出入口の扉の前を通りかかった時、何かがぶつかる小さな音が聞こえ、立ち止まる。
少しの間、聞き耳を立てていると、再び何かがぶつかった。