元恋人の甘い痛み【完】
その男は私の視線に気付き、此方へと顔を向けては視線が交わり合う。何とも言い難い悪寒が背筋を走り思わず視線を逸らした。
言葉で表すには難しい男。端から見ればイケメン社長なのだろうけれど、私は言い様のない恐怖心に駆られた。
「今日はもう帰って良いぞ」
「…分かりました」
いつもなら苦手な筈の雷牙さえ比べものにならない程マシに見えてしまっている私。
私は他の人達に向けて一礼をし、一目散に再び秘書室へと戻った。