元恋人の甘い痛み【完】
帰宅する身支度を整えるのに三十分近く時間がかかってしまう中、漸く鞄を手に秘書室を後にしエレベーターへと向かった。
下のボタンを押しエレベーターを待つ中、背後から人の気配がした為ボタンのある横側へと移動しエレベーターが開くなりボタンを押して先に乗って貰う。
「お先にどうぞ」
「どうも」
私の横を通り過ぎた男の後ろ姿に思わず目を疑い開いた口が塞がらなかった。
その男はさっき異様な威圧感を感じた男だったのだ。
恐る恐るエレベーターへ乗り込み一階のボタンを押して、扉を閉めた。