元恋人の甘い痛み【完】
雷牙の胸元を押すもののビクともせず、唇を幾度も啄んだり食んだりと繰り返される。さっきの財前のキスとは違い、荒々しくなく、まるで確かめるかの様なキス。
舌が滑り込んで来るかもしれないと身構えるものの、想像とは裏腹に一行に入って来ずただただ、幾度も重ねては啄むだけの優しいキスだった。
「……どうしてこんなキス」
「キスだけじゃ足りない。責任取って貰うからな」
「何の責任?」
「苛立たせた責任」
「…何よそれ」
雷牙は何事もなかったかの様に車のエンジンを掛けて、車を走らせた。