元恋人の甘い痛み【完】

『どうした?』

「今支配人から電話があって、今日スイートルームをご予約のお客様の前に違うお客様を部屋へ案内してしまったらしいのよ。お客様は激怒されていて社長を呼べって」

『……ホテルの宿泊パスポートでも渡せばまるく収まんだろ。俺の部屋の金庫に入ってる。それを持っていってくれるか?』

「…それで良いの?お客様にとっての今日は今しかないのよ?そんなパスポート一つで納得してもらえる?」

『世の中金の世界だからな。納得すんだろ。俺もそっちへ向かうが深夜になりそうだからな。パスポートで落ち着いたらそれで良いし、落ち着かねぇなら俺が何とかする』

「ええ、分かったわ」


スマホと鞄を手に部屋を出た。
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