元恋人の甘い痛み【完】
その夫婦は夫婦で私を見るなり硬直し、言葉を失っている。


それもその筈。


顔を合わせた相手は父親だった。


隣りに居る人は父親の再婚相手で、私と母を奈落の底へ突き落とした張本人だった。


「…優里…どうしてお前が…」

「……ここの秘書をしているの」

「…そうか」

「……これを」


宿泊パスポートを鞄から取り出し目の前のテーブルへと置いた。


「これは何だ?」

「宿泊パスポートよ。半年間の間無料でこのホテルを利用出来る券よ。これを持ってさっさと帰って」


一番会いたくない人にこんな所で会うなんて、最悪だわ。
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