元恋人の甘い痛み【完】
十八、財前の本気
シャワーを浴びて出勤するや否や、ロビーのソファーで見知った相手が座っている。
知らぬ顔をして通り過ぎようとするものの、その男は立ち上がり私の直ぐ真横へと並んで歩く。
「おはよう、優里」
「いつから呼び捨てになったのよ」
「たった今から」
「…今日は何の用?雷牙なら出張で居ないわ」
「雷牙に用があるんじゃない、優里に会いたくて来たんだ」
「…いい加減にして、私は貴方に会いたくなんてない。帰って」
「相変わらず冷たいな」
エレベーターに乗り込み、閉じるボタンを押すものの財前もまた同様、エレベーターに乗り込んで来た。