元恋人の甘い痛み【完】
「優里、どうした?」
「え、何が?」
「…いや」
雷牙はバルコニーへと来ると背後から私の身を包み込むようにぎゅっと抱き締める。
きっと雷牙は私の心境を薄々感じたんだと思う。
じゃなきゃこんな風に優しく抱き締めたりしないはず。
「母の事を考えてたの」
「…そうか」
「母の事を想うたび今までは悲しい気持ちしかなかったけれど、今は違う」
「…………」
「雷牙、貴方のお蔭よ」
雷牙は黙ったまま私を抱き締め続けた。