元恋人の甘い痛み【完】

「幸せを感じない事が母への償いだと思って生きてきたけれど、今は違う。幸せと向き合う心が生まれたの」

「…そうか」

「まだ完全じゃないけれど一歩ずつ前に進んでる」

「ゆっくりでいいだろ。それに、お前が前に進んでるのは俺は関係ない。お前自身が努力してる結果だ」

「そうかしら。貴方が手を差し伸べてくれてるから進む道があるのよ」

「手を差し伸べる事は簡単だ。だが、結局は自らの足で前に進まなけりゃあ前に進めないだろ」

「それはそうだけど」


雷牙の言う事はわかる。


だけど、私はその手が希望の光なのよ。


その手があったから進もうと思った。


これは譲れないわ。
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