As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「…いいなあ……。」
私達は、デートらしいデートをしたことがない。
手を繋いだこともなければキスなんて…
もっての他だ。
何の不満はないけど…。
それでも、みんなはどんなデートをするのか…とか、結達はもうキスとかする仲なのかなぁ…とか、ついつい考えてしまう。
「…そうだよなあ、そろそろちゃんとしたデートの一回くらいはしたいよなあ…。」
「……!何でわかったの?」
「え。いいなあってそういう意味じゃなかった?」
「そうだけど……。」
さすが……。
私の考えていることが、いとも簡単に伝わる。
言わずとも…
繋がる気持ち。
ならいつか……
私はチラッと横目で佳明の顔を見た。
いつかキスとかする日が来るのかな……。
…なーんて。
ね。
「よし、県大会終わったら一度ちゃんとデートしよう!」
「……待って、…いいの?」
「え。何で?」
「だって…、大会後なんて更に厳しくなるんじゃない…?それに優勝したら、甲子園でしょう?」
ピタリと…、
佳明の動きが止まる。
…変なこと言った!?
「…甲子園、ね……。」
「…うん。」
「連れてってやる!…て、言いたいとこだけど…。無理だもんな。」
「………。」
「今のチームじゃまだまだ!…けど…、上手くいけば来年とか行けるかもな。」
「え!すごい……。ウチの野球部って一回出たことあるんだよね、そういえば!県大会でもいい所まで行くし…。」
「まあな。ただ…、メンバーが揃えばの話だ。」
「メンバー?」
「おう。俺のシニアの後輩がウチに入ることと…、あとは、アイツだな。」
「………。」
あいつって……。
「中道。」
「なかみち……。」
「…アイツが入れば、守備の要になる。足も速いし、打撃もいける。いいピッチャーは必要だけど…、それだけが野球じゃない。なのにあいつは…、それを認められないんだ。」