As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「佳明と中道って……。」



「…言ってなかったよな。小学生の頃…、リトルのチームメイトだったんだ。」



「…そうなんだ…。」



そういえば……、


そうだった。



「あいつさあ、俺に言ったんだ。東京に引っ越す前に。『甲子園』で会おうって。…バカだよなあ、そんな夢みたいな話をあの時はまだ純粋に信じていて、俺も、きっとアイツも……。無我夢中で野球にうち込んでたんだよな。…けど、所詮夢は夢だと気づいた。どんなに好きでも、こんな田舎の野球チームでもがいていたって…、どうにもならないんだよ、現実的に。でも…、アイツは違ってた。都内の有名なチームに所属して、エースとして期待されて……。名門校から推薦くるのを約束されたようなもんだった。」



「…でも……、中道は今ここにいるよね。…なんで?」



「……逃げたんだよ、野球から。怪我をいいことに……、逃げた。」



「………。」


「…いや、実際は亡くなった母親のお母さん、つまりはアイツのばあちゃんのことが心配だったんだろうな。あいつの親父さんの地元っていうのが東京でさ、お袋さんが東京の大学に入った時に二人は知り合ったらしい。で、親父さんの方はバツイチで…、反対を押し切って結婚したんだ。こっちに住むことを条件にね。親父さんの仕事の転勤先がたまたま東京で……、そん時もかなり揉めたって。結局仲たがいして…、一家はここを離れた。修復する間もなく…、お袋さんは病死した。何も知らなかったばあちゃんは相当ショックだったと思うよ。」



「……。病死って…。」



「…膵臓癌を患ってたって。病院でそれが見つかった時には身体の数ヶ所に既に転移してて……。仕事に、そして休日もシニアの監督をしていた親父さんも忙しくて……。最期の時まで知らされずにいたそうだ。あいつは…、親父さんを恨んでる。」



「……そんな……。」




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