As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「……。なる程。あんたの場合は媚びないからいいのかもね。中道のこと恋愛対象に見てないもんね~、柚は。」



「や。あいつの話はやめよう。腹立つわ。」



「…じゃあさ、里中はどう?」




「…里中……。そうだよ…、りっちゃん!どうしよう。」




私はモヤモヤする胸の内を……




りっちゃんに話しはじめた。





その日、午後からはどしゃぶり雨が降ってきて……



部活は、渡り廊下でトレーニングのみだった。






帰ろうと、下駄箱に靴を投げ入れ外へ出た時だった。




「ゆーうっ。」



背後から私を呼ぶ声。




振り返らなくてもわかる。



後ろ姿だけで私だってわかるのはただ一人だけ。




「……結!」



もう一人の……


私。




「柚今朝傘持って来なかったでしょう?」




そう言って結は…



私に傘を差し出した。




「…わざわざ持ってきてくれたの?」



「ん。だって柚のことだから平気でぐしょ濡れになって帰ってくるでしょ?小学生男児じゃないんだから…やめてよね。」




「……それは……わざわざありがと。」



「それに…、暇だったしね。」



「……ん。」





ピンクの傘と…


水色の傘が…



同時に開く。




水色が私。
ピンクは結。



私たちは好む色も違う。



同じ顔、
同じ声。



違う性格。
違う好み。




優しくて……
かわいい結に憧れさえ抱く私。



けれども天は二物を与えない。




中学で…二人で入った陸上部。




結は長距離。
私は短距離。



神様は私に走る才能だけをくれた。



唯一、結に勝る才能を。




私は全国優勝を果たし……



この高校には、推薦で入学。



一方の結は……



必死に勉強し、一般入試にて合格。




そうしてまた……




同じ道を、
二人こうして並んで歩けるのだ。




…雨の匂い。
結は嫌いだとよく言う。



…私は…、好き。
春の花の香りも、田んぼの泥臭い香りも、大好き。


大地の息吹を感じると……
安心する。



ある意味、野性児……?




かわいいものに敏感で、綺麗なものに囲まれている結とは……



何もかもが違う。




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