Ａｓ Ｔｉｍｅ Ｇｏｅｓ Ｂｙ ～僕等のかえりみち～

「嘘つけない子だね。へぇ～…、ちゃんと進展あって良かったよ。」



「…進展って…。」



「………それに比べて、あっちは一体どうなってんだろうね。」



「あっちって？」



「決まってんでしょ？結とあいつよ。」



「………？」




紗枝が指差すその方向を見る。




「…いないじゃん。」



ってか…
中道がいる訳ないよね。


入れ違いだったんだから。



「どこ見てんの？裏よ、裏！毎日毎日あそこで素振りしてんだよねぇ……。」



あそこは、野球部の部室…。



「…誰が？」



「…中道くんに決まってんでしょうよ。」



「………は？」




中道が……



いるの？



「気づいてなかったの？なんだ、てっきり知ってるもんだと……。あー…んじゃあ言わなきゃ良かった。」



「なんで？」



「柚、絶対気にするから。」



「………。」


「中道くん部活始めてから、結と一緒にいるとこ見たことない。そりゃあ夏休みだし？結は部活してないからここでは見かけないだろうけどさ…。…に、してもよ。朝から晩までこんなことしててさ、いつ会ってんのかねえ…。」



「………うん。」



「…どうしてあんなに必死なんだろう。」



「……え。」



「まださあ、１年だよ、私達。人より少し遅れたかもしれない。だけどさ、すぐにレギュラーになれる訳でもないし、まだ先だってあるのに……。何がそんなに彼を駆り立ててるんだろうね。」



「……プライドかな。」



「……は？」



「なんだかんだ言ってさ、悔しいんだよきっと。山みたいに高いプライドなんて掲げてさ…、馬鹿みたい。」



「…………。」



「…てか、馬鹿だね、馬鹿。…野球馬鹿」。



「…アンタ妹の彼氏に対して厳しーね。」



「…そうかな。」