As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「そんな壁、アンタならぶち壊せるだろうに。」



「……。それは、結の役目だよ。」



「…そうかな。」



「…そうだよ。でなきゃ困る。」



「【困る】?何でよ。」



「…知らないけど……、困る。」



「ふ~ん。…あ、そう。」



紗枝はそういって自分の鞄の中を漁ると…


ぽいっと何かを投げた。



「…おっと。」



危うく落としそうになりながらも、なんとかキャッチ成功。



「………。何コレ?」



手元に小さな瓶。



「…私の制汗スプレー無香料だからさ、それ、アンタにあげる。」



「…なに?これは。」



可愛い形……。



「…香水!買ったのはいいけどつけてみたら思ったより甘くないってか……。私っぽくない。でもさ、柚ならピッタリな感じ。匂い嗅いでみて。」



私は瓶の蓋をあけ、鼻を近づけてみた。




「…あっ、いい香り!」



「…でしょ~?メンズものだけど、女の子がつけても全然イケる匂いだよね。」



「うんうん!」



「…気に入ったならあげるよ。それつけてデート行きな。」



「え。でも……」」



「…ラーメン一杯で手を打つよ。」



「………。ん、お安い御用だよ、サンキュ、紗枝ちん。」



「…どういたしまして~。それじゃあね、お先~!」



「ん、バイバ~イ!」






紗枝を見送った私は、小瓶を空に翳した。



…女の子って…
こういう可愛いもの、持ち歩いてるんだ。


スプレーすら持たない私は、単なるズボラ?


女の子失格?


手首にその香水を【ちょん】っとつけて……



鼻を近づける。



「うわあ……。」



自分についた、このなんともいえない良い香りがふわっと脳内に浸透する。





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