As Time Goes By ~僕等のかえりみち~




「じゃあ、お疲れ~柚。」




そして今日も……



「お疲れ!」



紗枝に軽く挨拶を交わし……




あの場所へと向かう。






私は野球部の部室にトンっと背中を付けて……




僅かに届くその音に、耳を傾ける。



何度も何度も風を切る……




小気味よい音。






夏休みも後半になると、ますます部活は忙しくなたた。



野球部に関して言えば……




朝から晩まで、みっちりと練習が行われていた。






「…ああ、夏も終わりだねぇ…。」



お盆が終わり……




間もなく、2学期の始まり…。




「…いや、夏は終わっちゃあいない。」



サンサンと降り注ぐ太陽の光が…、残暑の、その厳しさを象徴していた。


紗枝は汗を拭いながら……




ニヤリと笑った。




「……。海にはもうクラゲがでるよ。」


「海水浴か…。確かに行かなかったけどサ。」



「……ウチらしたのって…、かき氷食べたことと…合宿でスイカ割りしたくらい?」



「…そうだけどさ、柚忘れてない?」



「………?何を?お墓参りには行ったよ。」


「違うって。」


「……?なんだっけ。」


「あるじゃん、まだ。」



「…………?」



「今週末っ。夏の風物詩が河川敷で……」



「……あ。」



そっかぁ……、


そうだった!




「なんだ、約束してないのかあ、彼氏と。」



「…だって野球部は部活でしょう?」



「…つまらん部活だねえ、息抜きもないのか。でも……、ならさ、一人もん同士…一緒に行かない?……花火大会。」



いつか彼氏と行けたら…


なんてずっと思っていた。



現実は…
そうも上手くはいかないもんだな。



「勿論…、行きます!」



二つ返事で……



そう、答えた。




< 158 / 739 >

この作品をシェア

pagetop