As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「じゃあ、お疲れ~柚。」
そして今日も……
「お疲れ!」
紗枝に軽く挨拶を交わし……
あの場所へと向かう。
私は野球部の部室にトンっと背中を付けて……
僅かに届くその音に、耳を傾ける。
何度も何度も風を切る……
小気味よい音。
夏休みも後半になると、ますます部活は忙しくなたた。
野球部に関して言えば……
朝から晩まで、みっちりと練習が行われていた。
「…ああ、夏も終わりだねぇ…。」
お盆が終わり……
間もなく、2学期の始まり…。
「…いや、夏は終わっちゃあいない。」
サンサンと降り注ぐ太陽の光が…、残暑の、その厳しさを象徴していた。
紗枝は汗を拭いながら……
ニヤリと笑った。
「……。海にはもうクラゲがでるよ。」
「海水浴か…。確かに行かなかったけどサ。」
「……ウチらしたのって…、かき氷食べたことと…合宿でスイカ割りしたくらい?」
「…そうだけどさ、柚忘れてない?」
「………?何を?お墓参りには行ったよ。」
「違うって。」
「……?なんだっけ。」
「あるじゃん、まだ。」
「…………?」
「今週末っ。夏の風物詩が河川敷で……」
「……あ。」
そっかぁ……、
そうだった!
「なんだ、約束してないのかあ、彼氏と。」
「…だって野球部は部活でしょう?」
「…つまらん部活だねえ、息抜きもないのか。でも……、ならさ、一人もん同士…一緒に行かない?……花火大会。」
いつか彼氏と行けたら…
なんてずっと思っていた。
現実は…
そうも上手くはいかないもんだな。
「勿論…、行きます!」
二つ返事で……
そう、答えた。