As Time Goes By ~僕等のかえりみち~





次の日ー……




朝登校して来ると、私の下駄箱には……



水色の折りたたみ傘が入っていた。




「…あ。柚の傘。ふ~ん、直接渡さない所が中道くんらしーよね。」




結がクスクスと笑った。



「……。礼儀のなってないヤツだ。」



『中道らしい』ってなんだろう……?





私、あいつのこと全然知らないな。



まあ、知った所で何っていうワケでもないけれど……。




結と二人で廊下を歩く。




「じゃあね~、柚。」


「はいは~い。」



6組の前で結に手を振って別れようとしたその時ー…、




「…上原!」




遠くから名前を呼ぶその声に、私たち二人は同時にその声のする方へと振り返った。




中道だ……。




「…あ。結ちゃん、昨日は傘どーもね。」


いつもの天使スマイルを振りまく中道。



「…コラ。あれはわたしの傘っ。私には……?」



「…うわ~…、礼を強要されたの俺初めて。お前さては…Sか?」



「…つーかエロいヤツに言われたくない。」



「…ん?お前何でそんなこと知ってるの?」



「それはあんたが前私のブ………。」




「「…『ぶ』?」」



結と中道の声が重なる。



はっとしたかのように…


中道と顔を合わせて真っ赤になる結。




あんなの相手に、結……、大丈夫?



「『ぶ』ってなんだ?」



ニヤリと笑う中道。



出た、本性!




いやいや、まさかここでブラ見られたなんて…
言えるハズもない。




「とにかく…、」


「ねえ。」



私の言葉を遮り…、



黙ってやりとりを見ていた結がポツリと呟いた。




「どうして中道くんは、私が『結』で…柚が『柚』だってわかるの?」



………。



あれ…?


そういえば……。



中道はいつも……



間違えない。



「……なんで?」



言い争っていたことなんてすっかり忘れて、中道の顔をじっと見た。




「…なんでって…。なんとなく?」



なんじゃそら。



答えになってないし。





「……あれ、中道と…、柚ちゃん?…あっ、結ちゃん?!」



「里中……。」




なんてタイミング……。



できれば今一番会いたくない人に…


会ってしまった。



「こっちが結ちゃん?わ、マジそっくり。」
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