As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
夜空に咲く大輪の花……。
定番のタコ焼きをパクつきながら、
なれない下駄を鳴らし……
空を見上げる。
「たーまや~!!」
スターマイン、枝垂れ柳…
そして時には珍しい形の花火が上がる度に…、紗枝と私は声を大にして叫んだ。
女同士に色気はいらない。
夏の夜は、その雰囲気だけで私たちを酔わせていた。
「…アンタが浴衣着るのって貴重だね。」
紗枝がもの珍しそうに私を見る。
「…でしょ?結に着付けしてもらった。」
「…ふ~ん。…で、その結はどうした?」
「結は友達と行くんだって。そっちは私が着付けしたんだ。」
「…その気合い入った髪型は?」
「勿論、結の作品。」
「………いいなあ…。お互いいじり合えるワケだ。」
「……まあね。」
「けど双子揃って見せる相手がいないとなるとねぇ……。」
「…アラ、紗枝ちんもじゃん。」
「…そこ!突っ込まなくてもよろしい!」
光が滝のように流れるナイアガラを見つめながら……
私は大きく息を吐いた。
確かに……。
見せたかったなあ……。
「…おっ、そのカオも~らいっ。」
カシャッとシャッター音がなり……
「…うん、超切なげ~。」
写メに成功した紗枝は、ご満悦。
「…そーしん!」
「…えっ…?!」
誰に?!
「…ダーリンに送っておいたからね♪」
「…ええ~…、今絶対マヌケ顔してたのに……。」
「大丈夫大丈夫っ。」
最後に3発…
より大きな音を響かせて……
空いっぱいに、花火があがった。
そう……、最後の打ち上げ。
「……これで夏が終わるね。」
「…ん。」
「…あっという間だったね。」
「ん。」
「来年の今頃はさ…、私はちゃんと走ってるのかな。」
「…ん?陸上の話?」
「…それ以外に何があるの?」
「恋に突っ走るって意味じゃなくて?」
「それは現状維持で十分!…このままのペースが一番。」
「……ふ~ん…。」
紗枝は…
同意はしなかった。