As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
行き交う人混みの中で……
私たちは、余韻に浸っていた。
夏が終わる……。
その、瞬間を……。
「…帰ろっか!」
先に立ち上がったのは…
紗枝。
「……おうよ!」
土手から立ち上がり、おしりに付いた草の葉を叩き落とすと……
私達は、歩き出した。
「…来年こそはさあ…、間違ってもあんたと一緒に来るなんてこと、したくないなあ…。」
「…紗枝ちん、今日誘ったのはそっちだからね。」
「そうだけどさー…、つまりは相手がいないってことでしょ~?柚だって折角の浴衣マジック見せる相手が私じゃあねぇ…。」
「さりげに失礼な。」
うん、確かに浴衣マジックかもしれない。
少しでも女らしくなった自分を見てもらいたかった気もする。
だけど……
女の子同士、こうやって気兼ねなく……
思い切り楽しむのも、悪くはない。
「…でもまあ、男なんていたら、楽しむもんも楽しめないから……、ま、いっか!」
紗枝が私の心情そのものを喋り出すから…
心の中がほっこりと温かくなった。
「…じゃー、また部活で!」
「うん、じゃあね!」
腕に下げた巾着を揺らしながら、紗枝がブンブンと手を振った。
私も負けじと…手を振り返す。
そうして……
独りぼっちになった。
人混みを抜け出し、喧騒から離れると……
何だか周囲が一気に静かになった。
……寂しいもんだな。
さっきまでの賑やかさがまるで……
嘘のようだった。
「…ねえ、君…、一人?」
背後から、男の人の声。
…げ。
もしかして……
ナンパ?!
無視だ、無視無視っ。
「ねえってば、そこの浴衣のおねーさん。」
私じゃない、
きっと私じゃない…。